懐紙から日本のモノづくりを考える
和紙産業の現状
美濃和紙の懐紙ブランド「KAI」を運営するのは、機械抄き美濃和紙メーカーの丸重製紙企業組合。
懐紙作家でもある私たちは、その丸重製紙企業組合の3代目でもあります。
今回は、10年以上この和紙産業と和紙メーカーである丸重製紙に身を置いて感じた、日本のモノづくりの課題について考えてみたいと思います。
まず、1300年の伝統を誇る美濃和紙ですが、全盛期の明治時代には3,000軒以上の手すき和紙の工房がありました。
そして、戦前戦後あたりから丸重製紙はじめ機械抄きの製紙会社も誕生するようになりました。
戦後、手すき和紙は衰退傾向に入りましたが、高度経済成長期の流れもあり機械抄きの製紙会社は売上げを伸ばしていきました。
しかし、バブル経済の崩壊と共に機械抄きの製紙業も衰退傾向に入り、現在では大変厳しい状況に陥っております。
懐紙の現状
それでは、懐紙はどうか?
懐紙についても、丸重製紙の売上推移からも分かるように和紙産業と同じく、バブル経済崩壊後から衰退傾向に入り、現在も少しずつ減ってきております。
ただ、経済の衰退だけでなく、茶道人口の減少という“文化の衰退”も大きく影響しております。
ちなみに、透かし懐紙ひとつとっても、日本国内にも透かし懐紙を製造する製紙会社は数社存在しました。
それがなんと今では、、、透かし懐紙が製造できるのはほとんど丸重製紙1社のみというのが現状です。
一方で、世の中にはかわいい模様が印刷されたポップな懐紙も登場するようになりました。
そういった懐紙は、茶道具屋さんだけではなく、お土産屋さんや雑貨屋さんのようなお店でも販売されております。
しかし、懐紙全体の売上自体は減少傾向か、底辺で推移していると思われます。
懐紙ブランド「KAI」誕生の理由
そんな中、2016年に美濃和紙の懐紙ブランド「KAI」を立ち上げる運びとなりました。
「KAI」を立ち上げた一番の理由は“情報と流通の適正化”です。
それは、懐紙に限らず、和紙産業しいては伝統産業や近代の工業も含めた、日本のモノづくりに共通した課題なのかもしれません。
つまり、一般的にはバブル経済の崩壊と共に、モノづくり全体の生産量は減少しており今後も減少すると思われます。
しかし、全体の生産量が減ったにも関わらず、単価と流通だけはそのまま残っております。
“規模の経済性”という言葉がある通り、量をたくさん買うから安くするという理論があります。
しかし、量が減ったから高く買うという事はあり得ません。
であれば、これまで量をさばいて細かい流通に流していたような“長い流通”を、最短距離の流通にする必要があります。
ここ数年で叫ばれるようになった、モノづくりでの「脱下請け」「自社ブランド化」という流れを、丸重製紙においても懐紙という商品市場で行なったという訳です。
さらに近年は、物流の発達と、何よりインターネットの発達で、我々作り手からモノと情報がお客様に直接届けられるようになりました。
懐紙ブランド「KAI」が最も伝えたい事
懐紙ブランド「KAI」の役目は、前述したとおり“情報と流通の適正化”です。
しかし、懐紙ブランドとして最も伝えたい事は、懐紙の作り手としての想いです。
私たちがどんな想いで、どんな技術で、どんな環境で懐紙を作っているのか?
それを伝えたいんです。
これまで懐紙は、お店などで販売している懐紙の中から選んで買うものでした。
しかし、懐紙を小ロットでオーダー生産できる事はご存じでしたか?
特に、透かし懐紙の製造では、透かし模様を入れるための「透かし型」を内製化するという技術革新により小ロットでの透かし懐紙の製造も可能となりました。
しかし、これまではこんな小ロットの懐紙は価格も量も、既存の流通経路に適しておりません。
懐紙メーカーとお客様が直接もしくは最短ルートでないと不可能です。
日本のモノづくり文化を残したい
懐紙ブランド「KAI」では、お客様のご要望に直接的にお応えしながら、真心込めた懐紙をお客様に届けたい。
これは、作り手と買い手の究極の願いです。
そして、その作り手と買い手のコミュニケーションや関係性にこそ、心のこもった本当のモノづくり精神が宿ると考えております。
そして、懐紙を通じて日本文化の根底にある“丁寧な暮らし”を一緒に考えて参りたいと思います。
懐紙ブランド「KAI」の取り扱い店舗
懐紙ブランド「KAI」の懐紙の直売店舗は、
丸重製紙企業組合の直営店舗でもある「和紙専門店Washi-nary」。
Washi-naryの2階に、懐紙分ランド「KAI」の専門コーナーがあり、
KAIの商品が全て販売されております。
「和紙専門店Washi-nary」の店内風景と、2階にある懐紙ブランド「KAI」の専門コーナー
和紙専門店Washi-naryへのアクセス
〒501-3728 岐阜県美濃市本住町1912-1 NIPPONIA美濃商家町内
TEL:0575-29-6655
FAX:0575-29-6700
Mail: info@washinary.jp
定休日:月・火(祝日の場合は営業)
営業時間:平日(水-金)13:00-17:00
土日祝 10:00-17:00
(※平日(水-金)の午前中に御用のあるお客様はあらかじめお電話でのご予約をお願いします)
長良川鉄道「美濃市駅」より徒歩13分
東海北陸自動車道「美濃I.C.」より車で10分(約3km)
※駐車場はお近くの観光駐車場をご利用ください。
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